皆さんも「風神・雷神」は見聞きしたことがあると思います。 私は屏風絵やアニメなど「絵」で見たことしかなかったので、その筆文字を見たときはまさに「唖然」としました。自分の眼がなぜそこに釘付けとなるのか不思議でした(あの風神雷神をこんなふうに表現するんだ?!と)。・・・「書」の知識など無い私がこれほど「文字」に感動するのは初めてのことでした。それが建仁寺奉納式の場面であり、「ダウン症の書家 金澤翔子」を初めて知った日でした。
お母さん(金澤泰子さん)の手記を一部ご紹介します・・・『かつて輝しく繁榮していた文明国が地球上に存在していたけれど、その国は科学の発達が愛の量をはるかに超えてしまったので滅びてしまった、と聞いたことがある。科学や経済優先の発展を目指す文明社会は精神の荒廃を招き、疲弊して行くのでしょう。 愛だけで暮らす知的障害を持つ翔子はまるでマイナスの存在のように思われる。けれど、この稀有な愛の知性は経済優先で進んでいる世界の速度を少し遅らせる役目を果たすかもしれない。緩慢ではあるけれど真の人類の繁栄をもたらす助けになるような気がする。』と記しておられました。
一体、彼女の「書」にはどんなエネルギーが宿っているのでしょうか。今の私には答えられませんが、たとえば風邪を引いた我が子の熱を母の手が吸い取ってくれるような、そんな暖かいものを秘めているようにも思えます。世俗の欲にまみえず運ぶ真摯な筆の魅力が、私達の心を揺さぶるのかもしれません。何の舞台であれ、一心不乱に立ち向かう姿に人は感動を覚えずにはいられません。そこには確かに、積み重ねてきたものも沢山あるはずです。~~金澤翔子さんの展覧会は5月30日~6月15日まで京都・妙心寺で開催されるようです。 秋田にいる私には遠い舞台です・・・。