由利本荘市の民俗芸能
由利本荘市の民俗芸能を概観すると、ほとんどが鳥海山信仰と密接な関係を持っていることがわかる。たとえば獅子舞番楽は鳥海山の山伏神楽として獅子権現の信仰を強烈に保持することにより、鳥海山麓一帯に波及せしめ、同じ獅子を操る神楽獅子においても獅子頭を崇める信仰を高めていた。結局、それは民俗芸能と信仰が生活のなかで融合してきた証左でもあった。
鳥海山麓北側に伝承された民俗芸能は多彩で、その華やかさは他の追随を受けない。本海流獅子舞番楽と呼ばれる神楽系のものは、本市の本荘・大内・岩城地域で多くみられる是山流の獅子舞番楽の源流でもあった。神楽にはこうした獅子舞番楽、それに伊勢神楽、獅子神楽などがあり、風流系芸能では獅子踊り(ささら)や盆踊りがみられる。さらに綾踊り、人形劇などは人気も高く、伝承には、より一層の力が込められてきた。だが、その反面には、かつて秋田県でも希少な語り物などもあったが、消滅してしまった芸能も少なからずある。民俗芸能の消長もまた本市の歴史の一部であるに違いない。